ETが地球で珍獣と遭遇した話2

宇宙人小話(Short Story)その2(→その1)。誰得だよ…


1. Woman In Black

今回の調査ターゲット、近頃精神感応能力が高まっていることは他の地球人たちと変わらないが、妙な方向に発展させている様子。今はお互いのために、誰でも分かるようなテレパシーを大っぴらに行なうことは控えられているが、地球人がそうそう感応できないようなテレパシーに気付いて理解しようとしたりするのは少々面倒で、本人の性質上問題は無いとのことを念のために確認するのが目的だ。

さらには他者の悪意や性質の悪い念に対して特に敏感で、シャドーピープルや小鬼も目撃している模様だ…

通勤電車に乗っているターゲット到着。この日は普段と違ってターゲットが座っている場所が違ったため、電車内に入ってドア一つ分ずれていたターゲットの前に移動しようとしたが、ターゲット本人は察知してあからさまに嫌そうな雰囲気を醸し出し始める。こっちの意識は閉ざしていたがある程度の感知能力も有るのか? しかし、他者が一定範囲の傍に寄るだけで嫌なのか。分からなくも無いが。

座っているターゲットの前に立ち、確認を始める。確認と言ってもこちらからは何もしない。本末転倒になるからだ。さっそくこちらに違和感を感じているようで、精神的接触をしなくても気付けるぐらいの程度まではあるのも、事前に受けていた情報通り。こちらの確認はあくまで反応を見ることで、連れのいない通勤者は電車が目的の駅に到着するまで当然ながら黙々としているだけだ。

しばらくして何かを察したか、ターゲットが怪訝そうにこちらの顔を見る。こちらは典型的なアジア人の姿をしていたが、なにかしらに気付いている。悪い雰囲気は無いと思っているが良い雰囲気もあるとは思っておらず、何も分からないことを含めて、ただただ不快に感じているよう。そんなに人が傍にいるだけなのが嫌か。

しかし、そんなターゲットの感情もこちらへの関心もすぐに無くなった。問題が無さそうなことは確認できたので、ターゲット本人に気付かれないまま電車から降りた。


2. 遺伝子工学者の夢

研究者風の男が何かから逃げるために夜中、木や草が生い茂っている所を走っていて、遠くの方には辛うじて人工的な町の明かりが灯っているのが見える。第三者視点でその場面を見ている夢の中の私は、何故かこれは自分のいつかどこかの過去の人生の記憶を夢で見ている、と思っている。

男の風貌はごく普通の地球人で、暗くて肌の色は分からないが髪の色は黒か茶の暗い色だろう。身体的特徴はどうでもよいか。いかにもな研究者風の白衣を着ており、中の上着は分からない。下は綿のパンツを穿いているようだ。

夢の中で分かるような場面は無いが、夢の中の私はこの男が遺伝子工学の研究をしていたことを思い出した。夢の見始めには既に逃げている所なので、残念ながらどのような研究をしていたのかや、そもそも逃げ出した理由等、何もかも分からない。やはり所詮は夢か。

少し落ち着いたのか、歩き出した男は携帯端末を手に持ち誰かと会話をし始めた。夢の中の私は研究内容を思い出そうしているようだが、その携帯端末を見て今度は「夢の中ではない」私が気付いた。その携帯端末がどう見ても今現在のスマートフォンとほぼ変わらず、機械式ボタンは縁にしか無いものと思われ、私が生まれて数十年後のものだ。私の過去生ではなさそうなのだが、どうも夢の中の私はやはりこの男は自分の過去生だと確信しているらしい。夢の中ではない私の冷めた気持ちのせいか、次第に場面が暗転し、目が覚めた。

私は就寝前寝起き後のまどろみが好きで、うとうとしながら今見た夢を反芻していた。男が携帯端末を使っている時は、民家がある住宅街に居たようだったこと、建物の様式や男の髪型や服装等やっぱり今現在とほとんど変わらないこと、等々を

目の前でこちらを見下ろす、アーモンドのような目のいわゆるグレイ・タイプの生き物を見ながら。

夢は短くそれ程思い出すようなことは無かったので、今度は目の前にいるグレイ型の存在について考えてみた。肌の色は灰色ではなく青白い。髪の毛があるから地球人とのハイブリッド種族か。

有名なコンタクティーやチャネラーやSSP系インサイダーの話によれば、地球人とのハイブリッドを作るのは生殖能力もしくは感情を獲得するためやら、生体アンドロイドだから魂自体を獲得するためやら… ああ、だから私の遺伝子工学者だったらしい過去生を見ていたのか。はたして必要な情報は得られたのか、私の気付きのせいで中断されてしまったのか。

というか、せっかく人が気持ちよくまどろんでるのに、さっきから左下の方で「ぎゃあぎゃあ」とオバチャンがうるさいな。この連中は確かにネガティブETの末端的存在で、自身らのアジェンダのために上の指令に関係なく怪しい実験とかしていたが、今や投了してもう地球人に対して悪質なことはできない、仮に何か危害を加えようものならその有るかどうか分からないようなちっぽけな魂ごと…

ん?これも夢か現実か?いや、魂の次元での出来事か?まぁ、兎に角いい機会だ。友好的交流を図ろうじゃないか。私をそこら辺の地球人と一緒にしているようだが、残念ながら私なら簡単に動くことができるのだよ。ほら、このように上半身を起こして…

あっ。目覚ましが鳴る前に起きたがもう外は明るかった。はぁ… ただの夢落ちだとしておこう。仕方がないから、仮に夢で見たことが全て本当だったとした場合の、私の過去生らしいあの男の夢の矛盾についてどういうことか考えるとでもするか。